農研機構がガを追い払う超音波を解明 環境負荷の少ない新しい防除につながると期待

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農研機構は害虫のガが嫌がる超音波のパルスの長さを明らかにした。この超音波を聞かせることで、リンゴへの「ノメイガ」の飛来を1/6以下に減らせることを実験で確認しており、数年以内の製品化を予定している。

 

室内実験では2種類の超音波を発して、「モモノゴマダラノメイガ」の果実への飛来を1/6以下に抑えることができた。

 

モモやクリに害を与える「モモノゴマダラノメイガ」のメス成虫は果実に産卵し、孵化した幼虫が果実を食害する。そこで、ガを食べる2種類のコウモリが発する超音波を模して、「短い超音波パルス(※1)」と「長い超音波パルス(※2)」をガに聞かせた。(周波数は50キロヘルツ)。

(※1)「短い超音波パルス」モモジロコウモリを模倣-パルス長5ミリ秒、パルス間の無音区間11ミリ秒

(※2)「長い超音波パルス」キクガシラコウモリを模倣-パルス長30ミリ秒、パルス間の無音区間30ミリ秒

 

 

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(画像:農研機構

 

風洞装置内にリンゴを置いて、15分間で飛来したメス成虫の割合を計測した。何も聞かせない場合は64%だったが、短い超音波パルスを聞かせた場合には28%、長い超音波パルスを聞かせた場合には10%に飛来率が低下した。長い超音波パルスを聞かせた場合は、飛来率が1/6以下に下がり、超音波の効果が確認された。

 

超音波を嫌うガは多いが、超音波には遠くまで伝わりにくい性質がある。そのため、果樹園のような野外での使用は実用的ではない。今回の技術はビニールハウスなど、少ない超音波発生装置でも効果が期待できる環境での利用を検討している。また、超音波を用いることで、化学殺虫剤の使用を減らし環境負荷の少ない害虫防除技術の開発につながると期待されている。

 



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