大量生産で、品質は最高級。他社の追随を許さないコチョウラン経営の鍵とは

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(文・写真/窪田新之助)

 

国内最大級のコチョウランの生産法人である㈱松浦園芸は、愛知県豊橋市で年商5億円の経営を展開する。年間出荷量は24万株という大量生産ながら、ITでガラス温室内の環境を制御するなどして品質は最高級を保持。量、質ともに他者の追随を許さない「絶対差」を追求して国内トップクラスの経営体に上り詰めた。今年死去した先代の松浦進さんに代わって経営者となった長男の秀昭さんは、父の宿願だった海外展開を目指す。

 

 

施設環境はコンピューターで管理

 

同社は1.5haというナゴヤドームがすっぽり納まる広大な敷地に1.3haのガラス温室を構える。この温室は、オランダで開発された連棟タイプのフェンロ―型。秀昭さんによれば、骨材が細くて室内に陰ができにくく、作物に万遍なく太陽光が当たりやすい構造になっている。

施設内の環境は制御コンピューターで管理する。時間ごとに日射量や温度、湿度、風速、カーテンの遮光率などを計測。制御室のパソコンであらかじめ希望する室内の温度や湿度などを設定しておけば、それを維持するよう天窓を開閉させたり、ヒートポンプを稼働や停止させたりすることができる。計測したデータはコンピューターに集積されるので、出来上がった花の品質を見ながら栽培技術を磨くのに役立つ。

 

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このシステムは埼玉県のコチョウランの生産者が考案して、農業資材メーカーが売り出していた。松浦園芸では1.3ha分で導入するのにかかった費用は600万円ほど。オランダのメーカーが販売する同様の商品は最低でも1,000万円はする。しかも細かなプログラムができない。ただ、残念なことに最近になって製造中止になってしまったという。松浦園芸では事前にシステムのプログラムを勉強していたほか、修理に必要な部品を購入しているので、当面はこのシステムを利用できるそうだ。

 

3今回お話を伺った、代表の松浦秀昭氏

 

 

育苗はリスク分散で複数国に発注

 

育苗は全量の8割を台湾に発注している。現地生産法人との直接取引。また全体の2割は栃木県の生産者にも委託している。二社に分けているのはリスクヘッジのため。栃木県には松浦園芸の主力商品に絞っている。

秀昭さんやその弟らが現地の生産法人に定期的に出向き、苗の出来具合を定期的に検査する。一般的にコチョウランの出荷後の日持ちは1カ月半から2カ月だが、同社の商品が3カ月なのはそのため。こうした取引先の農業法人とは数字をベースに育苗技術の向上について話し合っている。数字というのは、育苗時の土壌成分や水分、温度や湿度など。

 

 

国内初の染色技術

 

同社は経営の安定化のため、市場価格に影響されない商品づくりを目指している。

そういう意味で目下売り出し中なのは、オランダから特許を得た染色技術を使ったイエロー、グリーン、パープル、マリンブルー、ピンクの五色。利用許諾を得ているのは世界四カ国で六社だけ。日本では松浦園芸だけである。ロイヤリティーは何本に染色したかで決まる。これはすべて自己申告。販売先は葬儀場や飲み屋、開院した病院など多様だ。

もう一つは「彩輪仕立て」。これは支柱を円形に仕立てるというもの。開花時に花の位置がずれたB品をB品として売らない方法として考案した。Lサイズの場合は、その丸い花の輪の中にメッセージボードを掲げられる。Sサイズは持ち帰ることもできるよう、箱に入れる。

 

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海外展開を検討中

 

今年亡くなった進さんは、コチョウランの前に観葉植物を作っていた当時から、園芸業界の将来を探るため海外の動向には常に目を向けてきた。シンガポール、香港、ドバイ、ロシア、ドイツなどへ輸出した実績を持つ。

秀昭さんもその意志を受け継いでいる。

「『日本のコチョウランはすごい』というのを世界に分かってもらいたい。世界に認めてもらえば、日本農業を盛り立てることにもなる。もちろん国内向けにうちの商品のアピールにもなる」

 



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