海外農業を見たからこそ、目指すべき農業の姿が見えてきた【上原農園×ファームシップ】(後編)

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埼玉県で露地野菜を生産する上原農園17代目 上原隆介氏と、植物工場コンサルティング・農産物流通等の事業を行う㈱ファームシップ代表 安田瑞希氏の対談を前編・後編に分けてお送りする。
【聞き手:(公社)国際農業者交流協会・皆戸顕彦、AgriFood編集部・石田渡】

海外農業を見たからこそ、目指すべき農業の姿が見えてきた【上原農園×ファームシップ】(前編)

 

 

オランダ農業の「合理的思考」を農業経営に応用

 

安田:上原さんは今埼玉県で上原農園を経営をされています。海外農業研修のきっかけは?

上原:僕も実家が専業農家をやっているのですが、安田さんと違いずっと継ぐつもりでいました。

きっかけは大学時代です。経済学部で流通を学んでいたこともあり、自分の親父を見て「農家って搾取されてるなぁ」と。「打開するヒントがないか」と考えていました。

その時、オランダでの農業研修をちょうど終えた先輩から、「オランダはおもしろい、日本の10年先の農業がある」と言われました。最先端を見て、あわよくば日本に持って帰ってこようということで、オランダで農業研修をやることに決めました。

 

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上原隆介(うえはら・りゅうすけ)
上原農園17代目。東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科卒業後、オランダで約1年間の農業研修を経て就農。現在、埼玉県入間市にて、約5ha、露地野菜を中心に生産。「時代と自分にあった農業経営」を実践する。

 

上原:研修先は、施設野菜の最新鋭の農家。実際に経験してみると、何もかもが合理的すぎて、日本にそのまま持って帰ってきても自分は楽しめない、自分のやりたい農業とは違うと感じました。集荷コンテナのレールが暖房用パイプの機能を持っていたり、1時間あたりの収穫量がスタッフごとに正確に分かったり。

だから、技術でなく、農場主の「合理的な考え方」と「経営哲学」を学び始めました。一番衝撃的だったことは、「どれだけ秀品率を上げられるか」「どれだけ高値で売れるか」ではなく、「収量は8割でいい」という考え方に出会ったこと。他産業では当たり前だけれど、「トータルで考えたときのコスト意識が大事」という意識が根底にあり、新鮮だった。

今、都市近郊型農業を行っていますが、「土地が限られているなかで、どれだけ効率的に回せるか」といった思考に応用されていますね。

安田:生産性っていう考え方、なかなか国内で学べる場所はない。

 

 

間口は広く、出口はもっと幅広い海外農業研修

 

皆戸:お2人とも、20代前半で海外農業研修を行い、それをターニングポイントとして大きく意識を切り替えられているように思います。

上原:やはり目的をしっかり持っていくと得られるものは大きいです。「日本と海外の違いを知る」とか小さなことでいいので。研修はあくまで手段で、それを利用して自分のやりたいことに向かっていったほうが良い。

安田: 19ヶ月、もしくは1年間を研修期間として注ぐことに対して、危機感を持つことですかね。実際、海外農業研修には良いところも悪いとこもある。日本で19ヶ月使った方が良いかもしれない。ただ、腹をくくって行った人は、次やることが決まって帰って来ている。

この研修は、非常に入り口が広いから、みんな飛び込んでいって欲しい。正直なところ楽ではない。けれど、ど真ん中から農業変えていく道も、亜流で農業変えていく道も、出口の選択肢は非常に幅広い。一緒にアメリカで研修した同期には、穀物メジャーのグレンコアで働いているような人もいます。

皆戸:研修生のOBには、熊本県の蒲島知事のように政治の道に進む人もいますしね。成長意欲ある人は向いていると思う。

 

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農業を、子供が自慢できる仕事に。

 

石田:今後やっていきたいことは?

安田:農業は、食べ物を作る大事な産業。いろんな人に集まってほしい。人が集まれば、色んな意見が集まって、面白くなる。そのために、まずは足元の自分の会社を大きくしていっている。もう一つ、自分は子供の頃「農業をやりたい」とコンプレックスがあり言えなかった。今の子供が、そんなコンプレックスを持たない世の中を作りたい。

上原:近くの小学校で、総合学習の時間に、授業をやっています。子供に農業に興味を持ってほしいし、胸をはって自慢できる職業に変えていきたいですね。

僕は、時代にあった、自分にあった経営を貫く。農業を楽しむこと、続けることが目標。自分の息子がやりたい、って思ってくれるような働き方、生き方をしたい。

石田:お2人とも、お忙しいところありがとうございました。

 

 

 

(公社)国際農業者交流協会[JAEC]、海外農業研修について

 

JAEC海外農業研修は、農場で実際の農作業に携わりながら学ぶ実務研修を重視したプログラムです。優秀な経営者の下、実践的に身に付けた技術や知識は、教育機関にいながら学ぶそれとは一味違います。

日本ではあまり一般的ではありませんが、ヨーロッパで農業を学ぶ若者は、学校(座学)で知識を身に付け、指導者のいる農場で技術を磨くことができます。世界のエリート農家たちの多くは、この高度な経営者を育成できるカリキュラムから輩出されています。

私たちの海外農業研修は、日本では不足しがちな農場での実務研修を、しっかりした農業指導者の下で身に付ける絶好の機会といえます。

 

プログラムには、農業先進国である5つの国(アメリカ、デンマーク、ドイツ、スイス、オランダ)に長期滞在できるコースを用意。現地の農場に滞在するので、農業の技術力はもちろん、言語や外国人とのコミュニケーションの力が身に付きます。そして何より、若い時期に海外で過ごす経験が、強い自信と世界とのつながりを確信できるようになります。

少しでも関心を持った方は、まずは概要を知ってみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

気軽に参加出来る説明会が、下記日程で開催されます。

2016年9月10日(土) 池袋サンシャインシティにて行われる新農業人フェア内説明会(※アメリカコースへのご案内)
・2017年2月18日(木) 池袋サンシャインシティにて行われる新農業人フェア内説明会(※H29年度研修へのご案内)

説明会の詳細はこちら

(公社)国際農業者交流協会 海外農業研修説明会

 



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