農水省が中山間地域における優良事例集を公開 用水不足の解消、トマトの雨よけ栽培で高収益等
農水省が、中山間地でも土地を整備して収益性の高い農業を実現している地域の事例集を公開した。北海道から鹿児島まで、全国の中山間地における優良事例をまとめているので今回はその一部を紹介したい。
日本一の柿のまち目指した奈良県五條市
奈良県五條市は柿の産地として知られている。しかし、山間地特有の急傾斜な土地で、生産品種の偏りや用水の不足など多くの問題を抱えていた。そこで、昭和49年から平成13年にかけて基盤を整備。傾斜をやわらげ、早生から晩生までバランスよく品種を取り入れて、用水の安定供給を実現した。その結果、柿の栽培が拡大して、ハウス栽培による大玉で高品質な柿の高付加価値化に成功。加工と流通面でも、分散していた選果場を統合することで出荷体制を強化して、あんぽ柿(干し柿)の加工、販売や海外輸出も促進させた。
また、地域の若年層が中心となりPRイベントや栽培のための勉強会などを実施。その他、市場関係者との交流会や現地見学会など、数多くの交流イベントも開催した。地域全体で「奈良の柿」としてのブランドを確立させ、昭和49年から平成16年の30年間で五條市の農業所得は22億円から57億円(約2.5倍)に増加した。
雨よけ栽培でトマトの高品質化を実現した岐阜県高山市
岐阜県高山市はトマトの雨よけ栽培で品質を向上させ、高収益化に成功した地域。もとは傾斜が急で狭小な農地が多く、農家の経営規模は零細だった。昭和63年から平成13年にかけて基盤整備を実施。農業用水を確保した農地を造り、トマトやホウレンソウなどの高収益作物の生産を拡大した。これを契機に地域に営農者組合を設立。雨よけハウスでの栽培により、傷みや裂果の少ない高品質の作物が可能になった。
交通の便が悪かった同市は道路などのインフラも整備。輸送時間の短縮化、コストの削減につとめた。そした、集出荷施設の整備により地域の雇用も創出した。これらの総合的な結果として、昭和63年から平成13年の13年間で農家一戸の平均販売額は950万円から1,300万円(約1.4倍)に増加した。
今回紹介した事例以外にも農水省のWebサイトには各地の事例が紹介されている。今後も成功事例を追加していくとのことなので、ぜひ参考にしてほしい。