フードロス対策は消費者意識の改革からは始まらない — AI時代の廃棄食解析ビジネスに参入した「FridgeCam」と「Winnow」

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食品廃棄大国、日本。 環境省が昨年発表した資料 によれば、2016年に発生した食料廃棄量は約2,700万トンに上るそうです。 農林水産省の国政モニター意見 では、1940万トンの食品廃棄が5,000万人分の食料に相当すると指摘されていることから、私たちは年間6,000〜7,000万人分の食料品を捨てていることになります。 毎年2月、恵方巻きシーズンになるとメディア各紙がこぞって特集する食品大量廃棄の問題。クリスマスシーズンにもケーキの廃棄問題が話題になります。 ただこうした動きを見ていると「フードロス」や「恵方巻きの大量廃棄」が単なるバズワードとなっている気がします。消費者の同情の声は集まるものの、企業のアクションには繋がらず、恐らく来年も同じように大量廃棄が起こるでしょう。 一方で海外に目を向けるとAIを使った効果的なフードロス問題の解決方法を模索するスタートアップが登場してきています。 冷蔵庫を丸裸にする「FridgeCam」 最初に紹介するのは、ロンドン拠点の企業「 Smarter 」が99ユーロ(1ユーロ = 約130円)で発売しているカメラセンサーが「 FridgeCam 」です。 冷蔵庫内にある食料品情報を写真データから取得します。私たちは1日に冷蔵庫を開け閉めする回数は平均20回。ドアが閉まる度に自動で撮影を行い、冷蔵庫内の余り物をモニタリングします。 どの食品がいつ消費期限を迎えるのか、過去のデータから次にどの食品をスーパーで買うべきかを提案。ユーザーはいつでもアプリを通じて冷蔵庫内の食品リストを細かく確認・管理することができるようになりました。 The Gurdianの特集記事 によると、イギリス家族1世帯当たり、年間で700ユーロの食品廃棄を行っているとのこと。そのうち40%を占めるのがパッケージサラダ。欧米のスーパーでは、袋詰めされたスーパーが売られており、結局食べきれずに残して捨てることが習慣になっていることがFridgeCamのビックデータによって判明した形です。 サムソン社も同じ冷蔵庫内の食料品をモニタリングするコンセプトでFamily Hubを発売していますが、5,000ドルの費用がかさむので価格差別化ができているといえるでしょう。 Teslaを模したデータ収集モデル FridgeCamの面白い点は、自動車会社Teslaの開発手法を参考にしている点です。 Teslaは自社ブランド車から上がってくる車体データを集積・解析することで製造技術の向上に取り組んでいます。ユーザーの利用データを製造ラインへ反映させることで、製品レベルを上げる仕組みです。 同様に各世帯の食料品廃棄データを収集し、食品製造企業へデータ転売することで生産量の最適化を目指します。エンドユーザーの利用データを製造へ活かすTeslaのやり方を踏襲しているわけです。 たとえば、袋詰めサラダの40%が廃棄されているデータがわかれば、食品メーカーは従来品と比較して60%の量しか入っていない小さめのサラダ販売を行う販売戦略を思いつくかもしれません。消費者需要にマッチした形で食品販売を行うことができますし、仮に売れ残りが起こったとしても廃棄量も少なく済みます。 レストラン業界でも始まった廃棄食分析 B2B市場でもAIを通じた廃棄食分析ビジネスが盛んになってきました。代表的なものが同じくロンドン拠点の「 Winnow 」です。 こちらもThe Gurdianの記事 によると、世界中のレストランで毎年発生する廃棄食の価値は800億ドル。コンビニやスーパーでは販売データが各商品ごとに取得できるため、仕入れ量の調整ができます。一方でレストランで発生する廃棄量はお客の好みによって変わってくるため、データ分析が難しい領域でした。 WinnowはAI搭載の大型IoTであり、廃棄物を投入するだけで自動で廃棄食のカテゴリー分けを行います。分析データから、どの食材をどのくらい仕入れればコストを最小化できるのかを提案してくれるのです。実績として、利用企業は50%の廃棄食削減に繋がっているそうです。 北欧家具を販売するIKEAでは、店舗内のレストランにWinnowを導入し、CNNによると、導入から9カ月で90万ドルに相当する35万食の廃棄削減の実績を残しました。 現在70店舗で導入されていますが、2019年間でに400店舗へ拡大させるとのこと。日本への導入も近いかもしれません。 消費者が社会運動として食品製造企業へフードロス対策を求めても、企業が既存のビジネスモデルを維持するため、早急な対応を期待できるわけではありません。 説得力のある形で市場変革を行うためには、コスト削減のメリットを提示し、中長期戦略として食品廃棄の分析を企業に認知・実行してもらうことが最も効果的であるとスタートアップたちは考えています。そこでAIを活用した廃棄食ビジネスに注目が集まっているのです。 SmarterとWinnowはエンドユーザーの廃棄データを可視化し、世界中から集めた情報をビックデータ解析することで、消費量に合った量のみを生産・仕入れる一貫した流れを作ろうとしています。 日本は食品廃棄大国。今回紹介したスタートアップたちは環境保全意識の高いイギリス拠点でしたが、日本のベンチャー及び大手企業にとって、自国の巨大市場で展開できる廃棄食ビジネスは大きな商機になるはずです。
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