飼料用米で新品種「オオナリ」 「タカナリ」の脱粒を減らし平均940 kg/10aの収量を実現

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農研機構は飼料用米に適した水稲新品種「オオナリ」を育成した。「オオナリ」は既存の品種「タカナリ」を改良したもので、脱粒を少なくしたことで粗玄米収量は多肥栽培で940 kg/10aに達する。

 

飼料用米の生産を持続させるには、単収を増やして生産コストを大幅に削減していく必要がある。これまでに、多収で温暖地向きの飼料用米には「タカナリ」が利用されてきた。けれども、「タカナリ」は脱粒しやすく、刈り遅れによる収穫期の損失が多いことが課題だった。

 

新しく開発された「オオナリ」は、生育の特性や草姿が「タカナリ」とほぼ同じ。「タカナリ」を栽培していた地域で容易に導入できるメリットがある。また、脱粒性が改善されており、平均940 kg/10aの安定した多収を可能にした。白葉枯病には中程度、縞葉枯病には強い抵抗性を持っており、栽培適地は関東以西の地域。

 

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「オオナリ(左)」は「タカナリ(右)」よりも脱粒が少ない。(画像:農研機構

 

 nics_press20160608_2_grah1(画像:農研機構

 

 

生産上で気をつけたい点は以下のとおり。

・耐冷性が弱いため冷害のある地域での栽培には向かない。

・種子の休眠性が深いため、休眠打破の処理が必要。

・いもち病に対しては抵抗性が強いと推定され、通常は発生しない。けれども、葉いもちには弱いので防除が必要。

・ベンゾビシクロン、テフリルトリオン、メソトリオン(トリケトン系4-HPPD阻害型除草成分)を含む除草剤に感受性が高いため、使用不可。

・苗丈がやや短いので、田植え後に冠水しないよう水管理が必要。

 

栃木県の宇都宮市内では「タカナリ」に替えて数ヘクタールの普及が見込まれている。また、これまで「タカナリ」を栽培していた地域などでも普及が期待される。



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