「農業のGDPは4倍になり、日本の基幹産業になる」 —農業ジャーナリスト窪田新之助氏インタビュー

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フリーランスで農業問題を取材する、農業ジャーナリストの窪田新之助氏が12月18日に、新刊「GDP4%の日本農業は自動車産業を超える」を出版した。”農業が「衰退産業」から「成長産業」に大転換する”とは言われるものの、地域の中ではあまり実感は湧いていないという読者もいるのではないだろうか。今回の著作と農業界の変化について、窪田氏に聞いた。

 

 

ーまずは、今回の著作の概要、そして農家・農業関係者へ伝えたかったことについて教えてください。

 

窪田:最も伝えたいのは、「農業が『衰退産業』から『成長産業』に大転換する時代が到来する」ということ。そう主張する根拠の一つはこれから始まる「大量離農」 です。

農業を衰退させてきた圧倒的多数を占める零細な農家が、これから5年以内に一気に辞めていきます。農業基本法以降の農政は「生産性の向上」を最大の課題としてきましたが、零細な農家の存在がその克服を阻んできました。ただ、これから農家が一気に辞めます。なぜなら農家の平均年齢が彼らの実質的な「定年」である70歳を迎えるからです。基本法から50年以上、結局のところ農政はその課題に対して何もできなかった。「農業のことは農業をしている人たちに任せよ」というのが戦後農政の最大の反省ではないでしょうか。

 

 

ー先日の農業センサスも話題となりましたが、農業人口は今後ますます減っていくと考えられます。農業人口の減少によって、日本の農業はどのように変わっていくと思われますか?

 

窪田:実際に今も進んでいますが、2020年を機に零細な農家が高齢を理由に農業界から一気にやめていきます。同時に、農林水産省とJA、農林族議員の「農政トライアングル」は機能しなくなっていき、農政の舵は成長産業化に切られていくでしょう。

彼らの源泉力は「兼業農家」でしたから。圧倒的多数を占める兼業農家が票田となり、利権構造をつくってきました。大量離農によって自然と力は落ちてきます。

加えて、超高齢社会の到来や、訪日外国人の増加により、「農村ビジネス」が大きな価値を持って行きます。高齢者が何をしたいかといえば、旅行です。若者や外国人、企業も、農村に関心を持ち始めています。農村の景色や田畑、体験は、農村の人にとって見れば当たり前ですが、彼らにとっては宝の山です。

 

 

ーJA、農水省と農家の関係にも、大きな変化が出てくるのでしょうか?

 

窪田:農業の経営者が育ってきている以上、JAも農水省もその動きを無視できなくなります。理由は二つあって、いままでのような猫の目の農政や農協経営をやっていれば経営者たちから突き上げにあうことが一つ。 もうひとつは商社や資材販売会社などが農業経営者向けのサービス事業に相次いで乗り出していることです。

資材の販売や農産物の流通を手がけるようになっているのは、明らかに農協の牙城を切り崩しにかかっていることの証左です。放っておけばJAは商売相手を失うだけなので、経営者向けのサービスを手厚くせざるを得なくなるでしょう。

 

 

ー「農村ビジネス」について、地域の資源を活用してビジネスを創る「NPO法人えがおつなげて」の話は印象的でした。一方で、人材の不足などによりビジネス創りが上手くいっている地域は多くはありません。今後、地域でビジネスをやっていく上で重要な事はなんでしょうか?

 

窪田:優れた農村ビジネスが誕生しない理由はいくつもありますが、最も大きい要因は経営者の不在ということに尽きます。開発資源はどんな地域にもあるわけです。ただ、それを発掘したり、地域をまとめ上げたりする経営者が不足しています。拙著では農村の「多面的機能」をビジネス化することを提案していますが、それには農村ビジネスをマネジメントできる人材の育成が不可欠だと考えています。

 

 

ー農業人口の減少やTPPなど、農業を取り巻く環境は大きく変化しています。農業経営者にとっては、やはりチャンスだと思われますか?

 

窪田:環境の変化はあらゆる人や企業にとって危機であると同時に好機でもあると思います。 経営においては環境の変化に対応することが最も大事です。そのとき求められるのは「インテリジェンス」でしょう。

つまり内的環境と外的環境について情報収集して、分析し、それを基に将来を描き出す能力だ。それを一人でこなせる経営者もいれば、そうでない経営者もいる。後者については優れた人材を取り入れ、育成することが欠かせないと思います。

 

 



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