低コストで小水力発電 農水路向け「フラッター水力発電装置」
福岡工業大学が落差のない水路に低コストで設置できる「フラッター水力発電装置」の特許権を取得した。開発したのは同大学工学部知能機械工学科の阿比留久徳教授。
フラッター方式とは、水中に入れた翼が水の流れに対して左右に動くことで発電をする方式のこと。従来の水車を利用した発電装置とは異なり、落差が不要で低流速から発電ができる。また、高速回転部を持たず構造がシンプルでごみ詰まりに強く、水中生物にも安全な設計となっている。
佐賀県唐津市水路での設置試験の様子(画像:福岡工業大学ニュースリリース)
「フラッター」の様子(画像:youtube動画「【福岡工業大学】「Technology for the Future ~福岡工業大学 総合研究機構~」 阿比留 久徳 教授:フラッターマイクロ水力発電法の開発」)
農水路向け小水力発電機として、フラッター発電は以下の点が優れている。
・大掛かりな工事は不要で初期投資を抑えられる
・専用導水路は基本的に不要のため、地元の合意形成を得られやすい
・水中翼の大型化や増設が可能
・稼働状況や異常の発生を目視で確認できるため、カメラによる遠隔監視もしやすい
・水中翼が低速で動くため、人が水路に流された場合も、強く挟み込まれるような事故とはならない
農水路における小水力発電の設置ニーズは高いが、工事費用や発電機の高額化、周辺生態系への影響、設置後の維持管理など多くの課題があった。フラッター水力発電はこれらの問題を解決する小水力発電として期待されている。
ゆっくりとした流れでも発電できるため、送電線を引くことが難しい地域での小規模な自然エネルギー利用のニーズに応えられるものと考えています。例えば、LED外灯の点灯や災害時の非常用電源、電動農機具の夜間充電等への活用が期待され、現在、バッテリーへの充電と放電の組み合わせを最適に制御して、電力を更に有効利用するための研究も行っています。
(「福岡工業大学ニュースリリース」より引用)
現在は実用化に向けた試験機の段階。小型のため発電量は、水流が毎秒1mで約50Wとなっている。また、「通学路上の暗い道のLED街灯を水力発電で点灯させたい」という要望も出ているという。