IT農業が変えた“心の余裕”、地域とともに生きる企業の覚悟
1年の中で7~8月しか食べられない「プチぷよ」を知っていますか? 福島県河沼郡会津坂下町のアルス古川が栽培する地元で話題のミニトマトです。兄弟3人が故郷へ帰り、”地域に貢献する企業”として挑戦する同社。プチぷよの栽培には、水と肥料を自動で供給してくれるITシステム「ゼロアグリ」をいち早く導入しています。園芸を担当する古川純平さんは、IT農業を導入したことによって「心の余裕が生まれ、新たなビジョンが広がった」と語ります。 お金に変えられないITシステムの価値 ―アルス古川では兄弟3人が故郷で農業に従事されていますよね。 はい。もともと父が集落内で水稲の機械共同利用組合を立ち上げ、水稲を栽培していました。父は建設会社に勤めていたため、最初は兼業農家でした。水稲の規模が大きくなったタイミングで長男と一緒に独立して、アルス古川を設立したのが始まりです。2番目の兄弟は、東京でWebデザインの仕事をしていましたが、そこを辞めて会津に戻っています。 ―純平さんはなぜ故郷に戻ろうと思ったのでしょうか。 私は東京でアパレル業界の販売員を7年間やっていました。故郷に帰って農業をしたいと長く思っていたのですが、東日本大震災の影響で会津にも風評被害もあり、父親からは「まだ帰る時期でない」と言われていました。ですが、逆に東日本大震災があって気持ち的に吹っ切れた面があるし、国の補助金が活発化したこともあって「今ガムシャラにやらないで、いつやるんだ」という気持ちで農業をするために帰ってきました。 水稲の育苗は春に温度を保つため、ハウスで苗を育てます。水稲の規模が拡大してハウスの棟数も増える中、育苗期間外の空いた期間に何か利用できないかと色々な作物を作付けし、検討してきました。その結果、水稲と両立できたミニトマトに落ち着きました。 アルス古川で栽培されているミニトマト。プチぷよは7~8月しか食べることができないため、今回は見ることができませんでした。皮が薄く、食感がさくらんぼに近いのが特徴といいます。 ―ITシステムを導入しようと思ったのはなぜですか?
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