アメリカ・オランダ・スイス….海外での長期農業研修という選択肢【国際農業者交流協会 皆戸顕彦氏寄稿】

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最近、特に学生の中で、農業の研修やアルバイトに行ったことのある、これから行こうとしている方が非常に増えてきた。今はいろいろな形の農業研修・体験のようなものがあるが、今日はその中でも、『海外で長期に実施する農業研修』についてご紹介したい。

 

「長期」で、「海外」に行くべき理由

さて、長期・海外の農業研修だけれど、そもそも「長期」で「海外」に行く理由、というのはなんだろうか?

まず「長期」については、長期だからこそ見る・知る・感じることができる体験がいっぱいあるからだ。種まきから収穫まで1年を通した経験、その過程で様々な気候変動に対応したり、契約で取り決めていた出荷量がとれなかったらいろんなところからかき集めて出荷したり、学校で教わったことや理論をどうしたら応用できるのか考え、やってみる。そんな体験である。単純に知識や作業体験だけでなく、自然と向き合うこと、安全な食を供給する使命をもっていることなど、農業の仕事をする上での“あり方”についても触れることができる。

また、なぜ「海外」に?というと、海外の農業に関する文化や仕組みの違いに目が向くことで日本の農業を客観的に見れたり、農業経営に必要な視点・考えを養える、というところが大きいかもしれない。また、日本と比べて単収が圧倒的に高かったり、大規模化・収益化が進んでいたり、グローバル展開が進んでいたりと、日本より先を行っている国も多い。それらを学ぶ貴重な機会になる。

そんな長期・海外での、OJT(On the Job Training)の農業研修を、私が所属している国際農業者交流協会(JAEC)で実施している。海外の農業を学ぶとはどういうことなのか?研修生の実体験を例として挙げてみたい。

 

 

アメリカの大規模野菜農家で、仕事への向き合い方を学ぶ

アメリカの研修に参加したAさん。Aさんは福岡県出身で、農業大学校を卒業したばかり。実家農家を継ぐ前の修行として、アメリカでの14ヶ月間の農業研修を選んだ。研修先は、カリフォルニア州の最南端の町Thermalの野菜農家。経営面積は約320ha、20人のフルタイムワーカーと120人の季節労働者を扱う地元では平均的な農家。ピーマンを中心に、セロリ、レタス、スイートコーンなど多品目の野菜を生産し、一部は有機農業でやっている。

メキシコとの国境であり、一緒に農作業をする仲間はメキシカン。農作業に自信のあるAさんでしたが、メキシコ人の作業の速さには驚き通しで、彼らに追いて行かれないように一生懸命だったそうです。彼らはなぜそんなに作業能力が高いのか?Aさんは、彼らはお金を得て生きる為に必死に仕事をしているのだと思い至り、仕事に向き合う心を見習ったそうです。そして、彼らのことを、一緒に暮らしていてよきライバルでありよき友だったと懐かしく振り返ります。帰国後は立派な農業経営者になるために実家農家にて奮闘しています。研修中に感じたこと、一生懸命だったことを忘れず、どんな困難にも立ち向かいたいと気持ちを強く持っているそうです。

 

スイス独特の農業経営と、人生の道標を知る

次は、スイスの研修に参加したBさん。

もともとヨーロッパへの憧れがあったBさんは、大学を卒業してすぐ、海外農業研修でスイスへ。期間は約12ヶ月、研修先はスイスの東部にある複合農業(乳牛+養豚)を営む農場。その農場の経営面積は26haで、労働力は、家族労働者2人と研修生1人(Bさん)。ほとんどが放牧地の農地の中で、搾乳牛44頭、繁殖豚20頭、肥育豚150頭を飼育、乳は加工用として出荷していました。

農場の畑で少し遠くに目を向けると、そこにはアルプス山脈。素晴らしい景色の中で、スイス独特の農業経営を学びました。農場で搾乳されている牛はブラウンスイス種でスイス在来の品種。この農場では、エメンタールチーズという穴の開いたチーズを生産するためにサイレージなどの発酵飼料を給餌していなかったそう。農場の牛乳で作ったチーズは格別で、忘れられない味だと言います。また、夏期には、アルプスで育成牛を放牧し新鮮な空気とおいしい山野の牧草を食べさせるという面白いやり方も行っていて、秋口には一回り大きく逞しくなった牛たちが農場に戻ってきたといいます。

このように、日本とは全く違う環境、うまくしゃべられない外国語に戸惑いも多いのですが、Bさんは自分のできる限りの方法で相手を理解しようと努め、相手に分かってもらう手段を身に付けました。農業に深くかかわりながら進路を模索した結果、本当に自分がやりたいことは人、そして食と関わる仕事だと気が付きました。今は、イタリアンレストランのオーナーシェフとして活躍されていますが、スイスでの研修が自分の生き方の道しるべになったと思っています。

海外で、長期の研修をすることでこそ得られるものは多い。特に学生の皆さんは、海外での実践的な農業研修を視野に入れてみてはいかがだろうか?

 

 

研修説明会開催中!

気軽に参加出来る説明会が、下記日程で開催されます。

2016年9月10日(土) 池袋サンシャインシティにて行われる新農業人フェア内説明会(※アメリカコースへのご案内)
・2017年2月18日(木) 池袋サンシャインシティにて行われる新農業人フェア内説明会(※H29年度研修へのご案内)

説明会の詳細はこちら

(公社)国際農業者交流協会 海外農業研修説明会

 

寄稿者プロフィール:公益社団法人 国際農業者交流協会(JAEC)  皆戸 顕彦
九州東海大学(現東海大学)農学部畜産学科卒業。2002年3月からJAECの海外農業研修事業で1年間スイスの複合農家にて研修。2003年JAEC就職、同年夏よりドイツボン市の欧州支部長を経て、現在は日本の本部にて勤務。



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